開発



仕事は順調、子供も生まれたし、そろそろマイホームかなと思って、前から勧められてた実家の農地に家を建てる段取りについて調べてみたら、なんだかいろいろ面倒なことがある様子。

ひとに聞いてもわかったようなわからないような、インターネットで検索しても開発行為許可とか農地転用とか都市計画法第何条とか、漢字ばかりで目がくらくらするテキストが延々と続き、うんざりしているお父さんお母さんは多いと思います。

ここではお話をカンタンにするため、当職がよくご依頼される

 20年以上に渡って市街化調整区域にお住まいの親御さんが持っている、実家の農地に新居を建てる


ということを前提に、入居までにどんな申請をクリアしていけばいいのかをお話しします。

本腰を入れて検討を始めると、高い低いといろいろな壁があらわれますが、すべてをきちんと処理していくことさえできれば、目指すマイホームに到達することはさほど難しいことではありません。

 

*市街化調整区域とは?ご説明はこちら
*なお市街化区域の農地の場合、今回のお話は関係ありません。役場としてそこは「建ててほしい地域」であり、申請の可否という点では問題なく家は建ちます。
*残念ながら都道府県および市町村によって法令運用の詳細は異なります。こちらでお話しするのは当事務所の近隣(上尾市・桶川市・北本市・鴻巣市)における手順です。他市町村の皆様は参考としてご覧ください。
*なお上記4市の場合、売買等で新たに買い受ける予定の土地でも建物は建てられます。

 

申請の手順

同じ「 申請 」ながら、内容は3つに分かれます。

土地の申請  農用地除外申出・開発行為許可・農地法5条許可
建物の申請  建築確認
登記の申請  境界確定・分筆登記・建物新築登記・抵当権設定登記など 

*以下、見出しタグを同色で色分け

 

 目  次
0 相談票の提出
1 農用地除外の申出(もうしで)
2 境界確定と分筆の登記
3 開発行為許可申請と
  農地法5条許可申請
4 開発の敷地工事と完了検査(土地)
5 建築確認申請 
6 確認済証の取得
7 建物の建築工事と完了検査(建物)
8 建物新築登記と地目の変更登記
9 建物の所有権保存登記と
  抵当権設定登記
10 ご入居

 

0、相談票の提出

市町村によって名称は異なりますが、開発行為を主管している部署(例 建築課、開発指導課等)に相談票を提出し、農地を管理する農業委員会との連携を取りながら、自分の条件で建築が可能かどうかを審査してもらいます。

うちの実家は昔からあの場所(市街化調整区域)に住んでいるし問題ないはずと思っていても、処理する部署の見るところは違います。どう転んでもできない状況なのを、手間とひまとお金をかけて頑張ってみたところで意味がないわけで、ここは正直にチェックしてもらいましょう。

提出物 親御さんとご自分の戸籍謄本住民票 (市民課で取得
建築予定地の謄本と公図       (法務局で取得) など

 

市の回答はそれほどかからずにやってきます。相談票を出したときの要望どおりで問題ないとの結論もあれば、何らかの条件つきで裁可との結果もあり、こちらの土地ならよいとか、残念ながらどうやっても許可は出ないなどの終了宣告のときもあります。

 


さあ意図したとおり、建築可の見通しが出ました。ここから申請行為が始まります。

1、農用地除外の申出(もうしで)

農地には2地域あり ― 青地と白地

もっとも初めに確認する事項になりますが、一概に調整区域の農地と言ってもこれがまた分かれていて、実は2つの地域があります。

青地(あおぢ)  正式名は農業振興地域。農業をするよう守られた地域
白地(しろぢ)  そうではなく、比較的規制の緩やかな地域


これは市街化区域か市街化調整区域かと同じく、何十年も前から決められているものであり反論することはできません。

青地であれば白地への転換は可能どうかの確認をして除外の申出をし、白地であれば次の申請(開発・農地転用)へとコマを進めることになります。

ただ青地の農地にも規制が厳しい順に(甲種・1種・2種・3種)の種別があり、対象地が3種なら除外の可能性はありますが、甲種ではまず無理と言えます。

集落に近い休耕地と、辺り一帯に集落はなく見渡す限り整然と区画された広大な農地群の一角とでは、農地の保護が大前提の官庁を思えば申請の可否は推して知るべしなわけです。

処理期間は半年から1年

申出をして農用地(青地)からの除外の許可が出るまでには最低半年以上かかります。農地は基本的に守るものというのが許可権者としての県の方針であり、気長に待つことになります。なお県が同時期に受付けた申請の数や、同市内の他の案件の進捗状況等にも処理期間は左右されます。市の申請全体を一体として処理するためです。

 

2、境界確定と分筆の登記

境界確定は必須。必要があれば分筆を登記

めでたく農用地からの除外の許可が下りたら、次は建築予定地の切り出しを行ないます。除外の申出のときに既にあらかたの建築計画を決めておく必要があるのですが、それを現実の登記に反映させる処理をします。予定した土地が大きすぎたり、道にくっついてないなど、求められる要件を満たしていない場合は土地の成形(分筆の登記など)をすることになります。

市街化区域  大体の敷地図で問題なし
市街化調整区域  敷地の境界の完全な確定が必要

 

[ 敷地について確実に要求される項目 ]
■最低敷地面積の確保(市により相違あり。200㎡以上や300㎡以上など)
■最高敷地面積の順守(申請人がお勤め人など、農家でない場合は500㎡以下)
■接道の確保(建築基準法上の道路への接続の確保)
■道路後退の実施(せまい道路の場合は、まんなかから2mまでは建築計画に入れない) など 

 

敷地の形状と合わせ、建物図面を作成

始まりはいつでも構いませんが、この頃までには建築士さんとの打ち合わせに基づく、ほぼ完成レベルの設計図書が必要となります。後述する農地法許可の申請書に添付するためです。

昔は予定建築物程度の変更を見込んだ図面で問題なかったのですが、最近は確定的な図面でないと申請を受け付けてくれません。ご注意ください。

 

3、開発行為許可申請と農地法5条許可申請

この2申請は一体不可分

今回の前提(市街化調整区域の農地に建物をたてる)の場合、この2つはお互いを確認しあい、一緒に処理される一体的な申請となります。申請日に多少のズレがあってもいいのですが、許可自体は申請月の翌月末あたりに一緒に出される段取りとなります。

内容1 開発行為許可申請

簡単に申し上げると建物を建てるその土地に対する許可となります。建物本体とは一切関係ありません。添付を求められる書類のなかで役場に確認されるのは

1、新居を計画する息子さんなり娘さんなりと親御さんとの関係
2、親御さんの当該市街化調整区域での20年以上の居住実績
3、予定建物を建てたときの土地利用の計画 など

 

内容2 農地法5条許可申請

こちらは役場のうちの農業委員会が内容を精査します。許可権者は県です。確認する内容は

1、どうしてそこに建物を建てなければならないのか、そこでなければならない理由は何か
2、本当に建物を建てる計画はあるのか
3、建物を建てる資力はあるのか など



農地(畑や田んぼ)は農家のひとでないと買えません。ですが農地法の許可が出たことの証明書を添えて法務局に申請をかけると所有権の移転登記という売買完了の手続きができ、非農家の方でも合法的に農地を手に入れることができます。

それほど遠くない昔、実際には建てる気のない人たちが農地を手に入れるためにカラ申請を繰り返した時代があり、そういった違法な企てをさせないために現在は厳格な審査を行なっています。

繰り返しになりますが、農地(畑や田んぼ)は実際の事業計画(建物をたてる、駐車場を作るなど)がなければ、宅地等への転用の許可はおりません。当座予定はないけれど、とりあえず宅地にしておこうというような安易な処理はできないのです。

*今回の申請にあたっては土地は親御さんから借り受ける使用貸借で設定するのが一般的です。贈与の必要は認めない。
*農地法の実務でよく取沙汰されるのは、
3条(農家同士の農地の取引)
4条(現所有者自身の利用形態の変更 畑→宅地など)
5条(現所有者から他人への権利の移転)です。
今回の件では親御さんから息子さん娘さんへの使用貸借権の設定(移転)として5条の扱いになります。

 

近隣市の諸要件 例
上尾市  桶川市
 北本市  鴻巣市

 

4、開発の敷地工事と完了検査(土地)

5、建築確認申 

敷地工事と開始時期

上記の4番5番は同時開始のため、併記しております。開発・農地法の申請ともに書類を提出した月の翌月末あたりに許可の連絡が届き、ここでようやく建物の申請も始まります。

許可が出たら開発・農地法の申請書どおりに敷地改変の工事をします。盛り土、切り土、区画を明確にするブロック塀の設置などです。

なお注意したいのは許可が下りてから工事を始めるという点です。時間がないなどの理由で許可の出る前に工事をすると違反転用として許可は永遠に出なくなります。お気をつけください。

工事が終わったら担当課(開発関係)に届出をし、検査を受けて、土地についての一連の処理は終了となります。

建築確認申請と適合証明

市街化区域では必要のなかった、土地についての許可が下りたことの証明として適合証明という小冊子を添付し申請します。処理期間は大体2~3週間です。

*適合証明 ー 土地の利用計画図など開発申請に添付した主要な図面を数枚だけ綴じたもの。表紙に市町村の印を押し、許可済みの証明とする。フラット35などが求めるものとは違うもの。

 

6、確認済証の取得

建物本体の設計についての建築確認という申請の許可が下りると建築確認済証(けんちくかくにんずみしょう)という書類が出ます。検査機関の大きな朱印が押してあり、建物竣工後には登記にも使う重要な書類です。

続いて施工業者さんの段取りに沿って、建築工事を行ないます。

 


長いですねえ。書いていて疲れてきました。インターネットにあるこの手の情報が、専門用語の羅列でお茶をにごしているのもわかる気がします(笑)。もうちょっとです。がんばりましょう。

7、建物の建築工事と完了検査(建物)

建築工事が終わったら、担当機関に依頼して図面どおりにできているかの検査をします。問題がなければ、今度は検査済証(けんさずみしょう)という文書が発行されます。これは銀行から融資を受ける場合などには必須の書類で、建築確認済証と同じく、こちらも登記に使う申請添付書類です。

この時点では外構工事(門、カーポートなど)が未了の場合が多々ありますが、以後の処理の支障とはなりません。先に進みます。

 

8、建物新築登記と地目の変更登記

ここでまた登記に入ります。建物はやはり高額な買物、法律の要請もあります。国の機関である法務局にその所在・種類・床面積および所有者を記載するように登記を申請します。また連続申請(連件)で地目を農地(畑や田んぼ)から宅地へと変更します。

建物表題登記  建物の新築登記のこと 
土地地目変更登記  農地(畑と田)→ 宅地  



*併せて農業委員会に転用工事の完了届を提出します。
*地目の変更年月日は建物新築年月日とおなじ

 

9、建物の所有権保存登記と抵当権設定登記

登記は表題部と権利部の2本立てになっています。建物新築登記で作った表題部のあとに施主様の所有権を登記します。また銀行等で借り入れを起こした場合は更にそのあとに抵当権を追加します。なお所有権と抵当権の記載は必ず同時に行なわれます。なおこの権利部の登記を代理できるのは司法書士さんです。

建物所有権保存登記  対抗力を持った所有権を登記する 
抵当権設定登記  金融機関の抵当権を登記する

*建物新築登記でも所有者は記載されますが、何か問題が起こったときの対抗力はないとするのが法律上の扱いです。すこし不思議なお話ですが。

10、ご入居

おめでとうございます。ここで晴れてお引越しとなります。

 

終わりに

申請それぞれの有意無意はともかく、とりあえずは先人が世の中を大過なくうまく回るようにと考えた末にできたのがこの一連の仕組みです。滞りのない処理をしてご新居が立派に立ちあがることを願っております。

なお建築予定地がお近くの場合はぜひご連絡ください。当方固定費のかからない個人事務所なので、建築工事に一式扱いで組み込まれているような場合に比べれば費用的な対抗力もあるのではないかと思っております。お力になれれば幸いです。つたない説明を最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

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