相続が発生し、遺産を公平に分割しなければならないという必要に迫られたときに、物件として一番問題になるのは何かといえばやはり、
切らずににそのままで相続するのには、いささか大きすぎる土地がある |
ということに尽きます。
もともとが何個かの土地で、それぞれを単独で相続できるのなら問題はないのですが、実際はそういう事案ばかりではありません。
目 次 | |
1 | 相続で分筆を考えるときの4つの視点 |
2 | 分筆登記申請の実務 |
1、相続で分筆を考えるときの 4つの視点
1、ひとつの土地を複数の方で相続する方法は4つ
2、土地の分筆は誰がするのか
3、分筆したほうがいいという理由
4、相続時の登記で気をつけること
1、ひとつの土地を複数の方で相続する方法は 4つ
- 売買してお金にかえ、それぞれが現金として相続する。
- 相続人のひとりが土地全部を単独で相続し、他の方にはお金で清算する。
- 相続人全員が持ち分を設定し、共有で所有者となる。
- 持ち分に合わせて土地を分筆し、それぞれが単独で所有者となる。
それぞれにメリット、デメリットがあり、思案のしどころではあります。
そう簡単に思った金額で売買できない、まとまったお金を持っている親族ばかりではない、先祖伝来の土地をそうやすやすと売却できないなど、事情は関係者様ごとにまちまちです。
2、土地の分筆は誰がするのか
最近は、実益と興味を兼ねてか、ご自身で相続の処理をされるかたが多いということを耳にします。相続人の間で遺産の配分計画に異議がなく時間的に余裕があれば、ご自身でやってみるのも結構おもしろいことかもしれません。
ただ遺産相続に関し、前述の4番を選択した場合は、その土地の分筆の登記についてはかならず 調査士の出番 ということになります。登記といえば「 司法書士 」、測量といえば「 測量士 」というのが世間一般の常識なのかもしれませんが、実際はちがいます。登記上で土地を切ることができるのはただ 調査士だけ です。
→ 調査士と、司法書士および測量士との関係について
* もちろん登記なんてよくわからないし面倒だということであれば、相続した人を所有者に変更する権利部の方の登記については司法書士の先生にお願いすることになります。当方からも気さくで頼もしい先生をご紹介することができます。
3、分筆したほうがいいという理由
売却ではなく、土地はそのままで相続したいというときに悩むのが、共有でその土地の所有者になるのか、それともそれぞれ単独で所有者になるのかの問題だと思います。
正直言って土地を切るのが調査士の仕事ですので、当方としての回答は初めからひとつだけなのですが、それを考慮に入れない判断を一社会人としてするにしても、やはり土地は切って相続したほうがいいのではないかと思います。
言うまでもないことですが、土地は分筆をして単独で所有することにしておけば、その土地に関してはすべて所有者単独の意思のみで処理することができます(利用、売買、贈与等)。逆に言えば、相続とは言いながらも共有のかたちを採ってしまえば、何をやるにしてもいつも他の共有者の同意が必要になってしまうのです。
お互いに仲もいいし費用もかかることだからと切らずに共同で相続するのは、そういうわけであまりお勧めいたしません。こちらもまた言うまでもないことですが、共有者同士の関係がこの先も変わらず、仲むつまじいものであり続けるかどうかは正直誰にもわからないからです。うがった言い方をあえてすれば、この先も仲良くあり続けるためにこそ、それぞれが単独で所有するかたちにしておいたほうがいいのではないか、と私は思います。
4、相続時の登記で気をつけること
まず細心の注意のもとに、お早目に完了させることだと思います。
仕事柄、いろいろなお宅の相続に関わることが多いのですが、動く額が大きければ大きいほど、いい関係だった親族同士がちょっとした行き違いでややこしい関係になったり、処理が遅れれば遅れるほど、まとまったと思っていた分割の協議案にいらぬことを吹き込んでくる第三者が現れてきたりと…。
通常の分筆登記では、境界点についてのご同意をいただくお隣りとの、言うなれば外側の関係だけが大切なのですが、相続のための分筆には、さらに内側との関係も必要になるということです。
慎重さと迅速さ。このふたつをまさに過剰なくらいに意識して取り掛かることが、相続を適切に処理するためにもっとも必要なことなのだと思います。
2、分筆登記申請の実務
1、申請人
2、ご用意いただく書類
3、画地計画
4、作業工程
5、費用
1、申請人
亡くなった方( 登記簿上の所有者 )の相続人から申請できます。基本的には相続人全員からの申請になりますが、公正証書や遺産分割協議書等で申請する土地の相続人が決まっている場合には、その書類を添付して一部の相続人からも申請することができます。なお申請を代理する調査士への委任状に押す印鑑は、三文判で結構です。
■ 基本は相続人全員からの申請だが、書類があれば一部の人からも申請できる。
■ 印鑑は三文判でよい。
■ 申請人について、注意点をひとつ → 相続人の一部から申請するときの注意点
2、ご用意いただく書類
お土地の所有者と申請人(相続人)様との関係がわかる戸籍の謄本と住民票のみになります。なおご面倒ということであればこちらで取得することも可能です。ただその土地を相続するのが一部の人だけで、申請もその相続人のみで行なうという場合にはその旨の記載のある公正証書等の遺言書、または遺産分割の協議書およびそれとセットになっている関係者の印鑑証明書が必要になります。
■ 被相続人と相続人の関係がわかる戸籍謄本と住民票
( 面倒であればこちらでも取得可能 )
■ 一部の人のみが相続する場合は、そのむね記載のある遺言書、または遺産分割協議書と関係者全員の印鑑証明書
3、画地計画
土地の区画割りをすることを調査士用語で 画地( かくち )と言います。基本的には申請人様のお考え次第でいかようにも切ることができますが、通常はのちのち、その土地をどう利用するかを考えて切ることになります。
まず大抵のお土地には道路が付いておりますので、それが建築許可の取れる基準法上の道路かの確認をします。見た目はあきらかに道路でも実際には許可の下りない認定外の道路という可能性もないわけではありません。なんの気なしに切ってそれぞれに所有権の移転登記をしたけど、よくよく聞いてみたら二本あった道路のうちの片方が建築基準法上の道路ではなかったために一部の土地には建物を建てられないということになり、宅地としての資産価値はゼロになってしまった…なんていうのは笑うに笑えないです。
加えて、建築ができる道路ではあっても建築時には道幅を広げる義務があるというお土地の場合には、その分を一緒に分筆してしまうということも可能です。数万円の追加で後日改めて分筆する必要がなくなるわけで、総体的に見れば費用は間違いなく安くなります。かつこの後退した部分をどのみち使えないからと市等に寄付する手続きを取ると、市町村によって扱いは異なりますが、分筆費用として十万円単位の助成金を受け取ることができる場合もあります。
■ 基本的にいかなる形にも分筆できる。
■ 接している道路が建築許可の出る道路かを確認する。
■ 接している道路に幅を広げる義務があるなら、一緒に後退しておけば後日分筆する手間がなくなる。
■ 後退する部分があれば、寄付をすることで助成金が出ることもある。
■ さらに一言 → 等価での分筆
4、作業工程
お話が長くなるので、こちらは別ページにて → 土地分筆登記 ( 境界確定測量 )
期間は大体1か月前後というところですが、正直案件の難易度に左右されます。
5、費用
所有者がご存命で一般的な案件の分筆登記が大体300,000円~ということになります。ただ、お店で売っている商品とはちがって案件ごとに費用の振れ幅が大きいのが調査士の業務ですので、実際にお話をうかがい、お土地の情報を確認し、かかる費用を確度高くお見積もりしてから作業の方には入らせていただくことにしています。
■ 基本的な案件で、300,000円から。
■ ただ案件によって難易度がちがうので、作業は費用を確定させてから。
→ 調査士の費用計算
相続のための分筆
こちらのご説明は、おおむね以上のようになります。つたない話を最後までお聞きいただき、大変にありがとうございました。お客様の直面している相続についても、当職にお手伝いできることがありましたら、いつでも遠慮なくお声掛けください。
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